「良いカタチの石を見つけたとき、もう仏様がぼんやり見えます。この時点で9割完成です。」
そう語るのは、石工・石彫家の齋木三男さん。
2026年9月19日(土)より、齋木さんによる個展「Little Buddhas」をTORINOKIで開催します。

ペンライト片手に、仏さんを探す展示
今回、ペンライトを使うという展示方法は、齋木さんから「必ずこうしてください」と指定されたものではありません。作品を送ってくださる際に、「光を当てると表情が浮き出てくるので、良かったら試してみてください」と、さりげなく教えていただいた程度でした。
実際に作品が届いて、試しにペンライトで照らしてみると、驚きました。自然光の下でははっきりとは表情は見えないぼんやりとした瞬間と、光を当てた瞬間に表情がふっと浮かび上がる瞬間との差に、鳥肌が出て、その穏やかな表情に素直に感動しました。だったら今回は、その体験そのものを軸にした展示販売をやってみよう、と決めました。

会場には一人一本、ペンライトをお渡しします。約100体並ぶ石仏の中から、光を当てながら気になる一体を探していただく。表情が浮かび上がった瞬間の驚きを、来場された一人一人に体感していただきたいと思っています。
気になる一体が見つかったら、その場に留めておく必要はありません。手に取って、重さを感じてみたり、窓辺の自然光の中に置いてみたり、家具やインテリアの間に置いてみたりしてみてください。どこか遠い存在にある彫刻作品としてではなく、日々の暮らしの中にそっと置いてみたら、という想像をしながら楽しんでいただく展示になればと思っています。


なぜこの企画に惹かれたか
Little Buddhasという存在を知ったとき、まずそのコンセプトに惹かれました。
日本で「仏さん」というと、お寺や家の仏壇といったイメージがどうしても強くなります。でも、もう少し気軽な距離感で仏さんと付き合ってもいいんじゃないか。そう思わせてくれるところに惹かれました。
もうひとつ、石という何万年も前からそこにある素材から仏を汲み出すという行為そのものに、リスペクトを感じています。地球が長い時間をかけて土に還っていく途中の、ひとつの姿。そこに「手を入れさせてもらう」という感覚は、齋木さんの言葉からもよく伝わってきます。

齋木さんに聞いてみたこと
今回の展示にあたって、齋木さんにいくつか質問させていただきました。ご本人の言葉をそのままご紹介します。
Q. なぜ「Little Buddhas」をつくり始めたのでしょうか?
以前から注文を受け、小さな石仏を制作していたのですが、数年前に作り溜めた手に納まる石仏の個展を開催してほしいと依頼を頂き、写真集なども作りプロジェクト化しました。現代にはなかなか生活の中に取り込みずらい石を、小さくすることでより身近になればと。
Q. 石を選ぶとき、何を見ていますか?
素材の石は私が住んでいる近くで採れる安山岩を主に使ってます。材料も地産地消。もっと彫りやすい石もありますが、土地(故郷)の意味みたいなのも大切にしたいというか、ここで彫る行為みたいなのも作品に宿る気がしてます。石を選ぶときは、直感です。子供の頃、気に入った石ころにワクワクして持って愛でる感覚ですね。
Q. 石は、人間よりはるか昔から存在している素材です。そんな時間を持ったものを扱っていて、感じることはありますか?
はい。もちろんです。石のカケラを見ていると、「何故このカタチになったんだろう?」といつも思います。地球の破片が土に帰るまでの途中ですよね。途方もない時間と記憶が詰まっている、、人間の時間軸とは比べてものにはなりません。彫らせて頂く、と言う気持ちは常にあります。
Q. Little Buddhasには一体一体、性格や個性のようなものを感じますか?
もちろんです。石の個性を引き出すように仏を彫っているつもりです。当たり前ですが、全て世界に一つだけ。皆様に自分だけの石仏を見つけて喜んで頂けたら幸いです。
Q. 仏を彫るという行為に、「祈り」のような感覚はありますか?
時代中で、信仰のあり方は変化しますが、皆心のどこかにそれは必ずあると思います。昔から日本は大きな石や山、木などに神が宿ると信じ、やがて仏教と交わっていくなかで今があります。小さな石仏作品を見る方々に祈りや優しさみたいなものが伝わり、生活の中の癒しになればと思っております。





見ているうちに、浮かんでくるもの
じっと見ていると、なぜか過去の記憶が蘇ってきたり、理由はわからないけれど安心するような気持ちになったり。多分、そのとき自分がどんな感情でいるかによっても、見え方は変わるんだと思います。
意識して向き合ってもいいし、意識しなくてもいい。毎朝「いってきます」と声をかけてみるのもいいし、なんとなく撫でてみるのもいい。そのくらいの距離感でいいんじゃないかと思っています。木のテーブルと一緒で、愛でて、長く寄り添っていくことでわかることの方が多い。そんな作品に僕は感じました。

石と木、それぞれの時間
長い時間を生きてきた石と、数百年を生きてきた木。
素材は違いますが、TORINOKIが木と向き合うときの感覚も、斎木さんとお話をする中で、どこか近いところにあるように感じました。木にも、性根がある。そこにすでにある表情や個性を、こちらが手を尽くして引き出す。作るというより、迎えにいく、という感覚。
齋木さんの石仏と、私たちが扱う一枚板の家具。スケールも用途も異なりますが、素材そのものの声に耳を澄ませるという一点において、同じ姿勢を共有しているのだと感じています。





展示概要
Little Buddhas Mitsuo Saiki
会期:2026年9月19日(土)― 9月27日(日) 時間:10:00 - 17:00 会場:TORINOKI FURNITURE(京都)
石の個性から生まれた仏様は、すべて世界にひとつだけ。ペンライトを片手に、ぜひ自分だけのLittle Buddhaを探しにいらしてください。
齋木三男|Mitsuo Saiki
1975年、群馬県生まれ。石工・石彫家、一級石材施工技能士。
18歳より石彫家・故 加藤亮氏に師事し、5年間の修業を経て家業である齋木七郎石材本家へ。伝統的な手彫りを基本に、石仏、彫刻、モニュメントなどを制作。約300年前の観音群の修復をはじめ、古い石造物の保存・修復にも携わる。
国内外の展覧会や芸術祭、石彫シンポジウムにも参加。2026年にはニューヨークのThe Noguchi Museum Shopにて作品「Stone Shadows / 石影」を展開。
近年は、石が本来持つ形や肌を生かし、最小限の手数で仏の姿を「汲み出す」手のひらサイズの石仏「Little Buddhas」を制作している。
斎木七郎石材本家 HP
https://www.saikistone.com/